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2014年05月08日木曜日

渡辺淳一さんの言葉

 「作家として生き残っていくためには、自らの欲望と好奇心をギラつかせなければいけない。品よく落ち着いたら消えますよ。金がほしい、有名になりたい、女にもてたい、家を建てたい--。これ、結構大変なんですよ(と声を落として)。どの世界もスターはギラついている。だからスターなんだね」。

 2013年2月の直木賞の贈呈式の際に、選考委員だった渡辺淳一さんがあいさつの冒頭で話された言葉とのことです。5月6日付け毎日新聞に、4月30日に亡くなられた渡辺淳一さんについての評伝が掲載されており、その中で紹介されていました。
 道を究めた人生の達人のような人の言葉は、味わい深くて面白いなと感じ、心に残りました。

 5月6日付け東京新聞の評伝には、「長く直木賞の選考委員を務めたが、最近の小説には手厳しかった」として、渡辺淳一さんが「頭で書きすぎ。狂おしい恋愛をしたり、死ぬほど女を追いかけたり、そういうのが今はないんだろうな」とおっしゃったということが紹介されています。この言葉もたいへん興味深いと思いました。

 また、同じく5月6日付けの日本経済新聞の評伝には、1981年に日本経済新聞の企画で女優の大原麗子さんと対談した際の言葉として、「小説を書く作業というのも、精神の内側を破廉恥に書いているわけだからね。自分の好き心とかずるいところ、いやしいところ、そういう本音の部分を書くのがいい小説になる」と、おっしゃったということも紹介されています。

 人間の本質、人間心理の底の底の底の部分への探求心というようなものが感じられ、感動しました。

 偉大な作家のご生涯に思いを馳せつつ、心からご冥福をお祈りしたいと思います。
 

wrote by m-hamada : 2014年05月08日 20:26