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2010年11月13日土曜日

読売新聞の『五郎ワールド』を読んで

 「その難解な言辞を通して何かしらひしと聴者に迫るものがあった。或る哲学的気魄(きはく)があった。先生の哲学には純乎(じゅんこ 全くまじりけのないさま)たる精神の厳乎(げんこ おごそかなさま)たる権威があった。この権威と気魄とが先生の学的態度の根本的特長であった」
 岩本禎(いわもと てい 明治2年5月3日(1869年6月12日)~昭和16年(1941年)7月14日、鹿児島県出身の哲学者、夏目漱石の『三四郎』に登場する広田先生のモデルとの説がある)の弟子だった宗教学者の三谷隆正(みたに たかまさ 1889年2月6日~1944年2月17日、日本の法学者)が、岩本禎の『哲学概論』(1944年、近藤書店)の序文に書いた言葉として、読売新聞11月13日付の『五郎ワールド』に登場していました。橋本五郎さんは、「師弟愛に満ちている」と評しています。師と仰ぐ方の講義をすべて吸収しようとする弟子の姿、師の哲学に迫ろうと真剣になっている弟子の姿が想像され、心に残りました。
 『五郎ワールド』には、さらに、その三谷隆正について『ビルマの竪琴』の著者、竹山道雄元東大教授が書いた「三谷先生の追憶」という文章の、以下のような一文も紹介されています。
 「先生を直接知った人にとってはそれは一つの体験であり、生涯の事件であり、幸福だった。先生は存在していられることそのものが、生きていることに意味があり、光明があり、頼りどころがあることを人に感ぜしめる人だった」
 「先生はいいがたき醇乎(じゅんこ 純乎と同じ意)たる人間味をもち、男性的な勇気をもち、つねに完成して平衡を保ち、沈静であたたかかった。欠点がなく、翳(かげり)がなく、浪漫的ないしは近代的な激情や官能味がなく、芝居がなく、飾り気がなく、無理がなく、エピソードがなく、逸話がなかった」
 橋本五郎さんは、「『美しい魂』に少しでも近づく道」、「『暗闇』を己の中に持つこと」と表現していますが、弟子の道を生きた人のひとつの姿を見たようで、深く考えさせられました。

wrote by m-hamada : 2010年11月13日 11:45