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2008年08月19日火曜日

レスター・C・サロー『富のピラミッド』に出てくる言葉

 「秩序を何よりも重んじる社会は、創造的ではありえない。しかし、適度な秩序がなければ、創造性はブラック・ホールに消える」(山岡洋一訳、TBSブリタニカ P.146)
 「知識を高度化し、利用するには、社会に適度な混沌と秩序がなければならない。中国のように秩序の度が過ぎても、ロシアのように混沌の度が過ぎてもうまくいかない。成功している社会は、相反する二つの力のあいだにダイナミックな緊張を生み出し、管理している社会であり、どちらかが行き過ぎることがないようにしている社会である。変化から生まれる混沌を受け入れられない社会では、新しい考え方が抑えられるが、創造的な進歩を最大限に利用するには、ある程度の秩序を維持する必要がある。
 ごく最近の例では、シンガポールとイスラエルという二つの国を思い浮かべればいい。シンガポールは秩序に重きをおき、イスラエルは個人の才能に重きをおく国である。(中略)シンガポールは、資源を動員し、模倣してキャッチアップするという単純な段階はもはや過ぎてしまった。現在の地位からさらに上を目指すには、イスラエル流の個人の才能が必要だ。果たして、それが可能なのだろうか。シンガポールはみずからの弱点を認識し、最近、MITと提携して、創造性に重点を置く技術系大学院の設立計画を発表した。一方、イスラエルでは、個人の才能を十分に利用するのに必要な秩序がないため、才能の一部が無駄になっている。一流とは言わないまでも二流のインフラストラクチャーですら不足しているのは、その一例に過ぎない。」(P.145~146)
 「個人のレベルでは、これと同じ力が、伝統と反逆のせめぎ合いとして表れる。アインシュタインは、15歳で学校を中退し、その一年後に市民権を放棄している。社会的、経済的、道徳的に異端として生き、みずからをジプシーと呼んだが、周りからはボヘミアンと呼ばれた。アインシュタインは、ある意味で、化学の面でも、社会的な面でも、無秩序のなかに秩序を求めた人生を生きたといえる。大いなる創造には、動かせない事実と、大胆な想像力、非論理的な飛躍が必要であり、後に公理に立ち返ることによってその正しさが証明される。これができるのは、反逆心を持つ人だけだ。」(P.146~147)
 「さらに上を目指すには、イスラエル流の個人の才能が必要だ」という指摘と、「これができるのは、反逆心を持つ人だけだ」という考えに驚き、ものごとをここまで深く考えている人がいるのかと感動しました。理論と現実の両方をしっかりと見つめ、思索し検証し理論構築していく、大変な労作業だろうと思い、哲学するとはこういうことではないかと感じました。

wrote by m-hamada : 2008年08月19日 00:53