« 江戸後期の儒学者・佐藤一斎の言葉 | メイン | 「週刊こどもニュース」の初代お父さん役、池上彰さんの言葉 »

2009年02月10日火曜日

伊藤光晴著「『経済政策』はこれでよいか」に書かれた言葉

 「経済理論を学んでいる者が、現実政策について発言するときは、つねに自己抑制をともなう。理論は--明示的であるにしろないにしろ--それが持っている前提と、現実との間に乖離があるからである。もちろん論者の中には、そうしたことを考えることなく、理論をもって現実を切り、批判する人もいる。『理論信仰』である。しかしもし、歴史の深淵の中で理論の変化を考えるという学説史の修練を持っていたならば、理論は論者が重要と思う現実の一部を切りとって構成したものであり、理論の相対化が意識されると同時に、現実の変化とともに、重点は変わり、理論と現実との乖離が生まれる可能性を強く意識するはずである。同時に経済政策は、事実についての深く広い追求の上に立たねばならないのである。事実についての知識の有無が人々の判断を左右するからである。
 この小著を通じて私が強く言いたいのは、事実についての追求努力なしに、既存理論やイデオロギーで政策を論じようとする『原理主義』的理論家の政策発言に対する疑問である。」(「はしがき」の冒頭の部分)
 また、はしがきの後半ではこのようにも述べられている。
 「経済政策を考える時、経済学において『理論と現実とを結びつけるという困難な仕事』と言ったシュンペーターの言葉を思い出すとともに、現実を正しくとらえるための努力を惜しまなかったケインズに、私は学ばざるをえない。」
 「原理主義」的理論家というような知的努力を怠ったものになってはいけないと思うとともに、しっかりと勉強して「現実を正しくとらえるための努力」を惜しまないようにしなければと思いました。
 1999年2月10日に発行された本でしたが、10年後の2009年、先輩に教えていただいて初めて読み、感動しました。伊藤光晴さんの著書・論文はしっかり読んでいこうと思いました。

wrote by m-hamada : 2009年02月10日 02:21