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2011年02月20日日曜日

貝塚茂樹訳注の『論語』(中央公論社)に登場する言葉

 第一 学而篇(がくじへん)の三
 「子曰く、巧言令色、鮮(すく)ないかな仁」

 著書の中の通解と解説は以下の通りです。
 (通解)先生が言われた。「弁舌さわやかに表情たっぷり。そんな人たちに、いかに本当の人間の乏しいことだろう」
  <巧言令色>巧言は巧みな弁舌、令色はゆたかな表情。しばしばお世辞とか媚(こび)とか訳されるが、これは誤訳である。お世辞や媚とわかっているものには大害はない。その見えないところが曲者(くせもの)なのである。
 (解説)これとそっくり同じことばが、陽貨篇第十七章(四百六十一)に載せられているし、弟子にとってはよほど印象深いことばであったらしいが、そのことばつきは孔子にしては激烈をきわめている。巧言令色で君主にとりいり、また甘い弁舌で世人を迷わせる佞人(ねいじん)が多かったので、孔子はずいぶん腹を立てていたとみえる。しかし、巧言令色のなかにも真実がまったく欠けているとはいわないで、「鮮(すく)ないかな」としたところに、孔子の心の広さがあらわれている。

 「巧言令色のなかにも真実がまったく欠けているとはいわないで、『鮮(すく)ないかな』としたところに、孔子の心の広さがあらわれている」との解説が、いかにも論語の訳者らしくていいなと思い、心に残りました。
 追い込みすぎないおおらかさというか、寸止めで自分を抑える自制心というか、懐の深さを感じました。こういう社会でありたいものと思います。

wrote by m-hamada : 2011年02月20日 20:16